人には言えない私の悩み


 当たり前のことで唐突ですが、女にももちろん性欲はあります。
 でも、そのしたくなるときというものは人によってそれぞれでして、一般的に生理前にしたくなる人が多いと聞きます。ですがそれにももちろん例外がありまして、生理中だったり生理後にしたくなる人だっています。とくに排卵日に性欲が頂点に達する人は本物の本能があるなーって感じですね。

 ――で、前置きが長くなりましたが、私は生理中にしたくなる方の人です。
 これはやはり「してはいけないとき」というのが人の本能のタブーを侵しているみたいでいいのでしょうか。私はよく分かりませんが。
 ですが、こんないやらしい部分を付き合っている人には面と向かって言えないし、知られたくありません。だけど、そういうときに限って付き合っている人は求めて来るんです。

「え。何、今生理中なの?」

 キスをし終わって、彼が私の胸を触れたとき私は今生理中だということを告げました。

「んーと。じゃあさ、口でしてもらっていいかな?」

 以前から「生理のときは口でする」というのが暗黙の了解になってます。彼だって、私としたいのですからそれは別に構いません。それに口でするのが嫌いというわけでもないですし。
 ですが彼の感じる顔を見ていると私のほうも濡れてきます。本能の部分がくすぐられてちょっと変な感じです。
 そして今日――

「濡れてるって、あれ? 生理中なのに赤くないや」

 舐めている最中、彼は私の下着の中に手を入れてきたのです。
 私は生理中にしたくなる人ですから、濡れているのは当たり前のことです。ですけど、そういうことを彼に知られるのはいささか恥ずかしくて。

「あのさ。すげー、したくなってきた……ダメ、かな?」

 彼は私の肩に手を掴むと、そんなことを言ってきました。
 一応理性はダメだよって言ってくれてます。ですけど、本能は別物らしくて私は思わず頷いてしまったのです。
 眼鏡を外され、来ている衣服を脱がされ、瞬く間に私は裸にさせられました。
 彼の舌先が胸をくすぐるように動き回るのでとてもこそばゆい。

「ん、……っと」

 突然、彼は私の足首を掴むといきなりひっくり返す。その格好と彼の視線に私は思わず非難の声を上げる。
 さっきからの続きですからシャワーも浴びてません。少々汗臭いかもしれません。ですけどそれ以上に私は生理中です。
 流石に汚くて彼にそれだけはって感じに拒否をするのですが、彼は聞いてくれません。

「いいや。なんかさ、鉄の匂いと味ですげー興奮する」

 舌を唇から胸、そして秘部へと移動させてきます。
 タブーから生まれてくる快感が脳を突き刺す。羞恥心と本能がせめぎ合う。

「も、いいかな。入れても……いい?」

 イエスの意味を込めて頷くと、彼は私を抱き上げゆっくりと入れてきた。
 彼は少しその気があったのでしょうか。それは私としてはとても嬉しいことなのですが「してはいけない」と思うと完全には乗り切れず、でもそれがまた快感を呼んで……。

「あ、何かすげー。滑り方がさ、いつもと全然ちがくてちょっと抑えられそうもない」

 それは私も同じでした。
 がむしゃらに動く彼に更なる快感を呼び寄せられ、私は何も考えられなくなってました。いつもよりも違う快感は背徳感と混ざり合って何故か心地よい。

「うあっ」

 彼はいつもよりも早く限界を迎え、彼の中から生まれた欲望が私のおなかの上に降り注ぐ。
 手で拭い取ってみる。真っ白いはずの欲望はほんのりと赤みがかかっていてピンク色をしていた。
 そのことを彼に言ってみると、彼は小さく微笑んで私にキスをした。そのキスは自分の血の味がしていてちょっぴし吐き気を催す。

 彼の部屋でシャワーを浴びているその間、下りてくる血の感触で少し切れた入り口がじんわりと痛かった。